ハンセン病について、知りたいと思ったら。東京近郊の方ならまず東京都東村山市にある国立ハンセン病資料館を訪れることをオススメします。
今回は2018年にハンセン病資料館を訪れた感想と、資料館を内包するハンセン病療養所 多摩全生園を歩いて感じたこと、ハンセン病差別について考えたことをお伝えします。
ハンセン病資料館に行ってみた感想
ハンセン病資料館は、かねてから行きたいと思いつつ、なかなか行けずにおりました。今回、思い立って行ったのですが、隔離施設であった療養所内にあることも相まって、交通の便が悪いです。
西武池袋線「清瀬駅」、西武新宿線「久米川駅」からはバス、JR武蔵野線「新秋津駅」・西部池袋線「秋津駅」からだと徒歩約20分と、結構遠いです。私は秋津駅から歩きましたが、資料館にたどり着くまでは、畑が所々にあるのどかな田舎の風景でした。
ハンセン病資料館は、ハンセン病の隔離施設であった療養所 多摩全生園の敷地内にあります。多摩全生園は広大な敷地で、入った瞬間からまるで違う世界でした。圧倒的自然が残る場所です。これについて詳しくは後述しますが、こんな敷地を歩きたどりついた国立ハンセン病資料館。
入館料は無料、受付で住所概略や年代、なぜ来たか?などアンケートのようなものを書かされます。受付の方は「今日はお暑いですね~」など声掛けしてくれました。
私が行った日は、学芸員によるガイドがありました。これが、びっくりするほど充実!なのに参加者は約3名となんとももったいない。しかも、定期的に行われているものではないようで、ブログで発信しても参考にならないとは思いつつ・・・。学芸員の方はハンセン病の当事者の方と交流が盛んなようで、実際に聞いた話、実際に見た事実などを交えて伝えてくれました。
展示室や資料だけを見ていても分からないことを伝えてくれるのがガイドの醍醐味だと思いますが、今回私はこの方のガイドがなければ知りえなかったハンセン病当事者の思いなどを伝え聞けたことは有難い収穫でした。
本来は1時間でガイドが終わる予定のところを、倍の2時間かかって案内してくれました。質問などもはさまず、駆け足で説明してもらっても2時間。聞いている方としてはもっと詳しく聞きたかったし、質問もしたかったぐらい。でも、資料館のガイドとしてはこれ以上ないほどの密度の濃さだと感じました。
もっと知りたい、学びたい気持ちを抱えて資料館を後にできることは、かなり稀有な体験です。
ハンセン病資料館は2007年にリニューアル、その際すごい額を投入しているらしく、資料館自体は非常に豪奢なものでした。豪華なカラー資料なども希望者には全て無料配布しています。ハンセン病当事者の方達は、こんなお金の使われ方を望んでいたのかな・・・と思わざるを得ない、なんとも言えない後味が残るものでした。
※リニューアル後の展示には、国にとって不都合な真実を隠して伝えていないという批判が多く寄せられています。
多摩全生園園内をひとり歩いて見学しました
国立ハンセン病資料館は、多摩全生園のなかにあります。多摩全生園とは、ハンセン病患者の隔離施設であった場所。現在は園内を市民が通り抜けたりできますし、強制隔離ではなく“自らが望んで”住んでいる方が園内に150名以上200名以内ほど。かつて1200名以上の方が暮らしていた全生園ですが、現在ここで暮らす方の平均年齢は85歳とのこと。今多く抱える問題は認知症や介護問題です。
園内は入った瞬間、圧倒的な自然が残っていることに驚かされます。東村山とはいえ、ここは東京都。まるで森といっても過言ではない、美しい新緑に覆われていました。人が入らないと、自然はこんなにも雄大にあるのだということを見せ付けられます。
でも、ここが隔離されていた場所、強制隔離が行われていた場所であるという前知識があるからか、それとも関係いのか分かりませんが、圧倒的に不安というか恐怖というかうら寂しいというかとにかくこの地が他と全く違う意味を持つ地として迫り来るものがありました。
人影は一切見えませんでしたが、長屋には人々の暮らしがいまも営まれています。家庭菜園をしていたり、置いてある自転車に人々の暮らしが垣間見えます。園内にはいまは使われていないであろう電話ボックスや面会人宿泊所も。
こちらは、ハンセン病患者の方達がつくった神社。ハンセン病を発症するまでは宮大工をやっていた方が中心となって建てたそうです。隔離されたからといって、これまでの営みや仕事を投げ打つことはできない人間のあり方を思い知ります。
歩き回ってないです、ほんの少しの見学でした。それでも感じることが多かったです。そんな中でも一番私が全生園を、強制隔離とは何かを、どういう暮らしがあったのかをまざまざと感じたのはこの風景です。
たくさんの、たくさんの看板。園内いたるところに、無数の立て看が立てられています。「公園につきゴミ捨て禁止 園長」「敷地内でのゴルフ練習は禁止です。絶対にしないでください 園長」「園外からのゴミ捨て厳禁 園長」・・・。
こちらは資料館外にあるベンチ。ベンチには、ひとつひとつに注意書きの掲示が・・・。
正直、ぞっとしました。あれもダメ、これもダメ、なにもかもダメという、管理のされ方が当たり前にずっとずっと続いているんだなと。はっきり言ってこんな看板見ながら生活するなんて胸糞悪いですよね。すごい象徴的な光景です。
ハンセン病の差別は現在
ハンセン病への差別、今やないとはとても言えないです。発展的に差別が淘汰されてきたというよりは、なし崩し的にハンセン病が、強制隔離が、差別が、忘れ去られていっていることを感じます。
今回、資料館の展示ではじめて知ったのですが、ハンセン病の子ども達が通学するのを、当該学校のPTAが校門前で反対し抗議運動をした事実。私は知りませんでしたが、あまりにもの差別というか、人は他者にこんな仕打ちをできるのか、ということに戦慄しました。戦慄したことは、ほかにもいっぱいあります。私もまだまだ知りません。もっと知りたい。まず知ることから、そこからしか、差別の問題は動かないと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、ハンセン病資料館、全生園に行った感想をメインにお伝えしました。知識のほとんどない一個人の感想です。これからもっと知っていきたいと、とりあえずこの本を買いました。
一緒に知ることからはじめていきたい。まずは自分からですね。
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