おむつをしていた頃から一緒に暮らしてきた愛娘との日々にとうとう訪れた別れの日。
娘の独り立ちを応援したい気持ちもあるけど、出て行かないでほしい気持ちも……。
揺れ動くなかで、次第に娘の巣立ちを素直に応援できない自分に自己嫌悪が生まれてしまったりしますよね。
娘の巣立ちというイベントを迎えてそうした精神状態になる方もたくさんいらっしゃいますし、実際に「空の巣症候群」と呼ばれる心理作用もあるくらいなので心配はいりません。
大切なのは、今の自分の気持ちをしっかり理解すること。
名前がついているとわかっただけでもかなり安心しませんか?
そうした精神状態になるくらいに娘さんを愛していたのですから、全く間違いではありません。
まずはなぜそうした寂しい気持ちを抱くのか、理解していきましょう。
この記事を読み終わることには、少しであっても気が紛れていることをお約束しますのでぜひお付き合いくださいね。
娘の一人暮らしが寂しい・・・
愛娘が一人暮らしを機に実家を出ていく瞬間というのは、やはり寂しいものです。
これまで二十年近く一緒に過ごしていた存在がいなくなるだけでも寂しいのに、その存在がお腹を痛めて産んだ子供であれば、その悲しさには想像すら及びません。
まずは、自分が悲しんでいることや寂しい気持ちを受け容れましょう。
世間では子供の門出を祝う風習がありますが、当然残される親の心境を考えれば祝うだけではない複雑な気持ちがうずまいているに決まっています。
子供の門出を素直に祝えない自分をおかしいと思わないで、まずは一個人として自分の気持ちを尊重してよいのです。
悲しい、寂しいと思える理由はたった一つ、あなたが子育てに本気を注いだからなのですから、まずはその気持ちを誇るところから初めましょう。
寂しく思えるくらいに愛情を注げる子育てをしたのです、大正解と言わずになんといえばよいのでしょうか。
娘の独り立ちを母親として応援しよう
大正解の子育てを経たあなたは、きっと人間として成長していることでしょう。
初めて子育てを経験した最初の数ヶ月、数年はきっと、辛い思い出がたくさんあったのではないでしょうか。
それでも、今こうしてちゃんと子供を育て上げられたのは、あなたの中に「母親としての自我」が芽生えたからにほかなりません。
人間は生理的早産というハンデを背負って生まれてくる生き物です。
どのようなハンデかと言うと、生まれたての人間はあまりに無力で、庇護される前提で生まれてきているということです。
食事も、立つことも、意思の疎通も叶わない無力な存在のまま生まれ落ちてくるのは、自然界でも人間だけだといいます。
他の動物であればもう一年経ってから生まれてくるところを、人間だけは早く生まれてくる、そういう現象を生理的早産といいます。
何を意味するかと言うと、人間は養育者ありきで生存が定義されているということ。
つまりあなたがいなければ、あなたの子供は確実に死ぬようにできているということです。
あなたがつきっきりで面倒をみる前提で、あなたの身体は一年早く娘さんを世界に誕生させました。
それは母親としての役目が重いことでもありますが、その役目を投げ出すことなくやり遂げたあなたは、すでに心の中に「母親」を持っています。
どんなに眠くても朝早く起きてお弁当やご飯の準備ができたのは何故か、母親だからです。
自分の体調よりも子供の体調を心配できたのは何故か、母親だからですよね。
たっぷり自分自身の感情を受け止めてあげた後は、もう一度、母親としてのあなたを呼び覚ましましょう。
特別なことは何も必要ありません、想像するだけで大丈夫です。
あなたのいないところで、あなたの知らない誰かと幸せな時間を過ごす娘さんを想像してみてください。
どうでしょうか、想像の中の娘さんは上手く笑えているでしょうか。
上手く笑えているなら、大丈夫。あなたは母親としてちゃんと娘の幸福を願えていますし、その気持ちは必ず娘さんにも伝わっています。
忘れそうになったときは思い出してください。
あなたが奮闘した日々や、そのおかげで手を離れても自分の力で笑えるようになった娘さんの笑顔を。
それがあなたが母親として生きた証であり、誇るべき勲章です。
空の巣症候群対処法
空の巣症候群は、子育てに本気であった人にしか起こりません。
ネグレクトや虐待をしていた親には確実に見られない症状です。
受験生が合格後、あんなに一生懸命勉強して入った学校なのにやる気がでなくなる症状のことをバーンアウトシンドローム、燃え尽き症候群と呼びます。
心理的にはこれと似たような状況になるわけですが、つまり目的が「入学」であったがゆえに「入学後」のことは一切考えていなかったために「何をすれば満足するのかわからない」ようになるのです。
子育てと受験勉強は比べられるものではありませんが、共通するのは熱意です。熱意を持って取り組んでいた、その熱意の対象が消え去れば当然熱意も消えますよね。
その結果、熱意によって助けられていた日々の生活すらままならなくなり、家事をやる気がなくなってしまうなどの弊害が生じます。
対策としては「熱意」を取り戻すことが有効です。
子育てほどではなくとも、自分が本当にやりたかったことや、がまんしていたことを少しずつ思い出していきましょう。
気が向いたときに、少しずつでも取り組んでいくことで、あなたの中の「母親」の部分が次第に薄れ、本来の自分を取り戻せるようになります。
老後、という言葉がありますが、これは人間に限った話です。
鮭が良い例です。鮭の命は出産と同時に途絶えますが、そうした形でなければ出産できないようなシステムになっていますよね。海で生きていた鮭が淡水である川の上流へ登り、卵を産んで絶命する。
鮭という種はどの個体もその運命を全うしますが、人間は違います。これは自然界における他の動物のライフサイクルと大きく異なる点です。
出産、子育て、巣立ちという種としての使命を全うしたあとも人生は続きます。本能的な縛りの無い時間を、人によっては二十年以上与えられるわけです。
当然これまでのような気持ちでは過ごせない方が大半でしょう。やるべきことがわからないのです。
でも人間には想像力があります。本能で定義されていた「やりたいこと」ではなく、心から興味のある「やりたいこと」をもう一度見つけることで、空の巣症候群は改善できるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょう、空の巣症候群についての理解は深まりましたか?
忘れずにいてほしいのは、その寂しさはあなたが本気で子育てをした証であるということ。それを誇りこそすれ、疎ましく思ってはいけないということです。
そしてもうひとつだけ、絶対にしてはいけないことがあります。子育ての延長です。
子供はいつまでもあなたの子供ですが、あなたはいつまでも親でいてはいけません。ときには突き放すことも必要ですし、距離を保つことで自立を促す必要もでてくるでしょう。
親の最後の大仕事は、親ではなくなることです。そのタイミングや重要性を忘れないようにしてください。
娘さんの門出を、心から祝福できなくても構いません、徐々にあなたはあなたの人生を充実させていきましょう。
ご覧いただき、ありがとうございました。
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